恐怖のループゲーム、その後 達人王

達人王は、東亜プランのシューティングの中でも最も難易度が高いゲームと思われる。このゲームで1千万点を出せれば、文句なしの1流プレイヤーだろう。

達人王に関しては、私の評価は以前とあまり変わらないが、もう少し詳しく説明する意味で、再度書いてみたい。




動画1


達人王とはどんなゲームなのか、まずは動画1を観てもらいたい。2周目のクリアまで到達しているものである。

一見したところ、そんなに難しいゲームには見えないかもしれない。むしろ鮫!鮫!鮫!のほうが難しいと思う人もいるだろう。しかし、実際にやってみると1周目から半端ではない厳しさだと分かる。このゲームの恐ろしさを、少しずつ説明していこう。



 敵の攻撃があまりにも激しい

動画1を観た人は、敵の攻撃は大したことがないと感じるかもしれない。確かに、敵弾の速さはそれほどでもないし、敵弾の数もそんなに多くはない。ところが、これが本当に避けられないのだ。

まず、自機の当たり判定が大きい。ほぼ見た目のままだ。敵弾が自機の端をかすめるくらいでも、余裕でミスになってしまう。縦幅も大きく、どの角度から来た敵弾であっても避けるのが困難になる。

敵弾には、自機を追尾する誘導性能を持つものが多いが、これの当たり判定がとんでもなく大きい。目の前に迫るだけでも当たってしまうくらいだ。また、ショットで撃ち落しても少しの間攻撃判定が残るようで、誘導弾に近付くのは危険が大き過ぎる。雑魚敵にも自機に向かって突っ込んで来るものが多いが、これの判定もやたらと大きい。6面で大量に出てくる緑色の雑魚敵は、1つ1つが必殺の強さを持っている。

1周目でも高難易度だが、2周目はまさに地獄絵図。東亜プランは、本当にこれが人間に可能だと思って作ったのだろうか? 2周目以降は難易度の上昇は止まるが、止まると言うよりはいきなり上限に達してしまうだけのことで、2周目が100周目になっているようなものだ。非常識にも程がある。


 自機の攻撃力が弱過ぎる

パワーアップすれば、自機の攻撃範囲は結構広くなる。しかし、攻撃力は貧弱だ。1匹の雑魚敵であっても、ショット1発だけでは壊せないことが多い。特に2周目は顕著になる。

主力武器は赤い色のナパーム弾なのだが、これは攻撃判定が出ていない時間が存在することになるので、非常に安定性に欠ける。常に敵を撃ち逃がすことを考慮しながら行動しなければならない。これでは神経が擦り減るはずだ。

2周目以降では、大型の敵は本当に硬い。そのため、壊しきれずに逃がしてしまうしかないという敵が多数存在する。これらの敵は、中途半端なダメージを与えてしまうと発狂モードになってしまったりする。そのため、大型敵にはショットを当てないようにして、雑魚敵だけは撃ち落とすという曲芸みたいなパターンを強いられる場面が散見される。忍耐強さが求められるゲームだ。


 自機のスピードが速過ぎ

スピードアップアイテムを取ることにより、自機の速度は相当に速くなる。それはいいのだが、速過ぎて制御が困難なのだ。

達人王の敵は、隙間の狭いばらまき弾や、等間隔に並んだ多方向弾を撃つものが多い。これらは弾同士の隙間が自機1機分くらいしかないものが多く、スピードの速い自機で正確に避けるのは非常に難しい。自分から当たりに行く形になってしまうことも頻繁に起こる。

ならば、ある程度の速度に達したら、それ以上はスピードアップアイテムを取らなければいいと考える人もいるだろう。このような作戦も有効ではあるのだが、それだとスピードアップアイテムを避けながら進む必要が出てくる。このゲームはアイテムの滞在時間が長く、避けるとなると邪魔で仕方が無い。またゲームの仕様上、最高速まで上げないと点効率がかなり落ちる。1周目クリアのみを目指すならともかく、1千万点を考える人は最高速にしないという選択は有り得ない。

実際に、この速さが必要とされる場面も多い。敵を誘導したり、移動の速い敵の体当たりをかわすなど、最高速が活かされる場面も多数ある。高速の自機を正確に操り、大胆かつ緻密な行動が要求されるのだ。


 パワーアップすると不利になる面が多い

パワーアップしていくと、一応は自機が強化されていく。ところが、敵の攻撃ランクも同時に上がっていく。これが本当に厳しい事態を招く。

場面によっては、MAXのパワーアップだと絶対に不可能だろうと思えるような攻撃が来ることがある。顕著なのは5面ボスだろう。2周目以降の5面ボス戦でフルパワーであった場合、生き残ることができる人は全世界で何人いるのだろうか。そう思いたくなるような絶望が降って来る。

だからと言って、パワーアップしないというわけにもいかない。ある程度はパワーアップしないと、雑魚敵ですら満足に落とせない。このゲームでは、パワーアップがMAXの時にアイテムを取得すると5000点入るが、これが点数源の主力となっている。その意味でも、わざと見送るということはできない。

このため、2周目以降ではノーミスでその周回をクリアするのはほぼ不可能。理想的な展開であっても、5面ボスで1ミス、6面で2ミスくらいが限界ではないだろうか。これ以下の損害で抑えられるプレイヤーは、全国でも数人だと思う。


 残機の数に余裕が無い

達人王は、20万点エブリで残機が増える。これは何周目であっても変わらない。そう考えると残機は増えまくるように感じるかもしれないが、1千万点でもたったの50機だ。このゲームの厳しさから見て、これはあまりにも少ない。

1千万点が出るのは、8周目の2面か3面あたりであることが多いらしい。そうなると、1周あたりで7機くらいの消費しか許されない。上にも書いたように、2周目以降では3ミスはほぼ確定。それ以外の消費を4機までに抑えなくてはならない。

点数以外にも、1UPアイテムで増えることもある。しかしこれは残機数が6機以下(だったと思う)の時しか出現せず、さらにボムを使わないと出すことができない。現実には、1UPアイテムで増える機会はあまり無いと思う。残機数が5機前後で推移すればいいのだが、それを狙って調整するのは困難なはずだ。

こうなると、単純な凡ミスはほとんど許されない。1千万点を出すには8時間ほどかかるが、その間に集中力が切れることはあってはならない。これは常人にできることではない。


 使えるボムの数が少な過ぎる

達人王のボムは発生が速く、ボムボタンを押した瞬間に効果が出るようだ。自機が無敵になるということはないが、攻撃力はそれなりにあり、苦しい場面の解決能力は高いと言えるだろう。しかし、使える数があまりにも少ない。

これはボムを補充するアイテムの数が極端に少ないことに起因する。1周あたりで、3個くらいしか出ないのではないか。実際にカウントしたわけではないが、多分それくらいだと思う。

そうなると、ボムを補充するにはミスするしかないことになる。ミスをすることによりボムを補充し、敵の攻撃ランクも下げる。こうやって凌いでいくしかないのだ。

ノーミスで進んでいくのが難しい原因として、ボムの少なさが占める割合も大きいだろう。もっとボムを使えるのなら、残機数にも余裕が生まれるのだろうが、ボムが欲しいなら死ぬしかないという鬼仕様であっては、残機が溜まるはずもない。どこまでも過酷なゲームだ。


 再スタート時に最初に出るアイテムの種類が固定されていない

鮫!鮫!鮫!の場合は、ミス後の再スタートで最初に出るアイテムはPに固定されている。ところが、達人王の場合は事情が異なる。ミスをしてもアイテムの出現順はリセットされず、再スタートしてから最初に出るアイテムの種類は固定されない。

アイテムは、パワーアップアイテム(武器チェンジアイテム)、スピードアップアイテム、ボムアイテムの3種類しかない。最初に出るのがパワーアップアイテムであればいいのだが、スピードアップアイテムだと困ったことになる。次のアイテムが出るまでは、メインショットだけで頑張るしかないのだが、これは露骨に攻撃力不足の状態だ。特に2周目以降では絶望的だろう。

最初のアイテムがスピードアップアイテムだと、いきなりボムを数発使うしかないという状況になりやすい。もちろん後々の展開が非常に苦しくなってしまう。最初に出るアイテムの種類次第で、残機を1機無駄にすることも多々あることになる。

もちろん場面によるが、運が悪かっただけで1機損をするのは珍しくもないらしかった。理不尽、本当にその言葉しか出てこない。達人王のプレイヤーは、こういう苦しみも味わうことになる。ドMなんですか?


 敵が壊せなくてストレスが溜まる

2周目以降の大型敵は本当に硬い。全滅させるのはとても無理なので、逃げ回る展開になることもしばしばだ。シューティングというのは、やはり敵を倒す爽快感が魅力のはず。それを奪われるのでは、ストレスが溜まる一方だと思うのだが。

達人王のプレイヤーは、こういう部分については悟りの境地に達しているのかもしれない。しかし普通の人間にとってはどうだろうか。少なくとも、私には耐えられそうもない。

達人王というゲームから連想するのは、極悪非道、ひたすら耐え忍ぶ、長い苦しみ、そんな言葉ばかりだ。これらを全て乗り越えた時、何か神々しいものが見えるのだろうか。




達人王は発売されてから1千万点が達成されるまで、異常に長い年月を要している。確か7年か8年後くらいだったと思う。当時、ループゲームに関しては実力日本一とされるプレイヤーがいたが、その人でさえ達人王1千万は一度挫折したらしい。後に達成されたとのことだが。このエピソードだけでも、どれだけの難易度であるかが分かるだろう。

驚いたことに、1千万点を達成しているプレイヤーはかなり多いらしい。2019年現在で、20人を越えているようだ。達人王1千万は超一流の証、そう思われているから挑戦者が多いのかもしれない。