東京で出会った人達 高嶋さん

別ページで紹介した木下さんの友人で、高嶋さんという人がいた。この人のことを少し書いてみたい。

東京の恐ろしさを教えてくれた、凄腕のプレイヤーである。


達人王の1千万プレイヤーである木下さんの紹介で、高嶋さんという人と知り合いになることができた。なんとこの人も達人王1千万プレイヤーであるとのこと。うーむ、自分とは格が違い過ぎる人達に囲まれてしまったと、少し怖くなった。

この高嶋さん、ゲームに対する気合が凄まじい。特にハイスコアを出すことに恐ろしいまでの執念を見せる。自分などは、こんな腑抜けで本当にすみませんと謝りたくなってしまうくらいだった。

木下さんは冷静沈着タイプだったが、この人は猪突猛進と言うか、目標を定めたらそれに向かって全力で突き進んで行く。私には、そんな印象が残っている。とにかく迫力があるのだ。



私が鮫!鮫!鮫!をやっている時に、高嶋さんが後ろで見ていたことがあった。確か10周目の10面だったと思ったが、こんなことを言われた。「今の場面は、もう少しパターンを洗練すれば、1機でもう2エリア進めるのでは?」と。

確かに彼の指摘の通りだったのだが、もう10周目だし、私としてはそこそこ進められればそれで良しでしょう、くらいの返事をした。しかし、「いやいや、可能性がある限り、最大限の結果を追求しないと。そんな中途半端な考え方では駄目ですよ。」と叱られてしまった。

他人に対する態度も厳しいものがあったが、自分自身にはなおさら厳しい人だったと思う。少しでもミスをすると、激しく自分を責める。パターンに不満があれば、完璧なものが出来上がるまでその場面を延々と繰り返して研究する。志の高さは、東京で会った人の中でも随一だったと思う。



木下さんに聞いたのだが、高嶋さんが私のことをこんな風に言っていたことがあったらしい。「タイガー氏(私のこと)が鮫!鮫!鮫!をやっていて、1回終わってしまったんだけど、ちょっと席を外した後にすぐに戻ってきて、次のプレイを始めていた。あの疲れるゲームを即座にもう1回始めるあたり、彼は根性がある。」

実はこれは高嶋さんの勘違いで、プレイ中に電話がかかってきて、無視できない相手だったのでやむを得ず中断しただけだったのだ。それで終わりにしてしまうのはさすがにもの足りないので、もう1回やり始めただけの話だった。根性とか気力があるということではなかったのだ。

その話を聞いて、やはり彼は体育会系の人だなあと思ってしまった。彼の前では、気が緩んでいるところは見せられない。



ある時、一人のプレイヤーについての話になったことがある。高嶋さんはそのプレイヤーを評して、「彼はゲームに対する態度がなっていない。あれではいつまで経っても結果が出ないし、見ていて不愉快だと思う。」というようなことを言っていた。私の眼からみても、確かにそのプレイヤーは中途半端な態度ではあったと思う。しかし、それを言ったら自分も半端者でしかないのだが。

そこで、私はこう言ってなだめた。「まあまあ、所詮は遊びというか、趣味でやっていることなんだし、そこまで追い詰めなくても。」しかし、高嶋さんはすぐにこう返してきた。「何を言ってるんですか。力と結果が全てでしょう、この世界は。」

この言葉を聞いて、私は絶句してしまった。あまりに厳しい考え方、ストイックな態度。この人の前では、私のような人間は絶対に存在を許されないことになる。東京のトップクラスの人達は、ここまで突き詰めて考えるものなのか。アーケードゲームの世界に居て、最も衝撃を受けた瞬間だった。



自分とっては、ゲームは楽しくやるものという意識があったので、高嶋さんの価値観にはとてもついて行けそうにない。やはり自分がいてはいけない世界だと思った。

私の地元でもハイレベルなプレイヤーはたくさんいたが、ここまで結果のみを追求する人はいなかったと思う。東京で勝ち上がる人は、このような考え方になるのだろうか。それとも、彼が特別だったのか。何にしても、自分は田舎でのんびりしているのがお似合いだと、改めて思った次第だ。